永く続くコロナ禍において、ライヴエンターテインメント業界や都市が文化存続・事業存続のために「現在」と「未来」に向けて、行なうべき事、向き合う現実などについて実践的な議論を行う生番組「Talking About With / After CORONA 2|ライヴエンターテインメントの現状と今後」が、4月14日(水)SUPER DOMMUNEにて配信されました。
<第一部|大規模音楽フェスの課題と解決>
坂口和義(クリエイティブマンプロダクション 邦楽部部長 / 洋楽宣伝部)
松本裕介(スペースシャワーネットワーク イベントプロデュース部長、SWEET LOVE SHOWER 統括プロデューサー)
鈴木幸一(アースガーデン代表)
司会:柴那典(音楽ジャーナリスト)
第一部では、日本の音楽フェス文化を支えるキーマン3名を迎え、コロナ禍でのフェスやライブを開催する上で行なっている具体的な対策や、この状況下で開催していくことに込めた思いについて、現場の写真なども交えながら語られました。
フェスやライブの現場の現在の様子は、実際に行ってみないとわかりづらいのも現状。そんななか、どのように安全に現場が整えられているかを知ることができる有意義なトークに。
<第二部|ダンスミュージックフェスの課題と解決>
岩波秀一郎(MUTEK)
土谷正洋(Rainbow Disco Club)
司会:立川智宣(フリーランス音楽PR)
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第二部では、ダンスミュージックのイベント開催にフォーカスを当ててのトーク。日本で長く人気を博す2イベント、昨年は着席の有観客イベントとオンライン配信を並行して行なった「MUTEK」と、昨年CGを交えた12時間の特殊なライブ配信を行なった「RAINBOW DISCO CLUB」のオーガナイザーが登壇。
彼らが苦心の末にもオンライン配信にこだわった理由や、一方でコロナ禍を経て高まるリアルな現場の価値について、また、リアルとオンラインのハイブリッド開催に見出せる希望について語り、コロナ禍だからこそ生まれていく新たな可能性のヒントを探るトークとなりました。
<第三部|エンターテイメント業界と街が連携した文化創造のあり方>
野村達矢(日本音楽制作者連盟理事長|ヒップランドミュージック代表)
河野太輔(渋谷La.mamaプロデューサー)
山崎和人(ヒップランドミュージック執行役員|FRIENDSHIP. プロデューサー)
齊藤耕太郎(ミュージシャン|作曲家|音楽プロデューサー)
スージー(ミュージシャン|ゴホウビ)
司会:長田新子(渋谷未来デザイン理事)
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第三部では、渋谷未来デザインから長田が司会として登壇し、ライブハウスやアーティストにとっての現状や、目下開催中の“バーチャルライブハウス”から発信するあたらしい音楽ライブ配信のあり方についてトーク。
コロナ禍でのライブエンタメ業界の収益は平常時の8割減とも言われるなか、アーティストである齊藤さん、スージーさんの発言からは、コロナ禍とは「自分で考えて動くことが重要」な時期であり、言い方を変えれば「考えられるチャンス」であるということが見えてきます。
そんななか、あたらしいライブ配信のかたちを模索し行なわれている企画が、「YOU MAKE SHIBUYAクラウドファンディング」に寄せられた支援金使途のひとつとして 「バーチャル渋谷」内につくられたライブハウスでの配信イベント「YOU MAKE SHIBUYA VIRTUAL MUSIC LIVE」。渋谷のライブハウスなどとコラボし推薦されたアーティストを含む100組のライブパフォーマンスを、没入型の音楽体験のかたちで公開しています。
アバターを使ってバーチャル渋谷の街から地下のライブハウスへ降り、エントランスを通ってフロアへ入れば最前列に行って拍手したりということまでできる音楽体験には、リアルイベントと同様のワクワク感がある、と野村さん、山崎さん、河野さんが語ると、齊藤さん、スージーさんからは、
「渋谷というシティブランドを使って渋谷から音楽を発信していくことに意味がある。渋谷だからできること」
「今後アーティストとお客さんの双方向でのコミュニケーションができるようになるなど、自分たちも積極的に参加してみんなでより良くしていきたい」
といった前向きな意見が寄せられ、これからのライブ配信カルチャーとも言うべき文化の発展に一層期待が高まるトークになりました。
<第四部|オンラインイベントの現在と未来の可能性>
Moment Tokyo x VJ REZ
H2KGRAPHICS
司会:宇川直宏(DOMMUNE|現”在”美術家)
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第四部では、現在急速な発展を遂げているXRの分野にフォーカス。XR系のフェスやAR & VRクラブの実現を進めるコレクティヴが、クラブシーンでの映像表現の先駆者でもあるDOMMUNE宇川氏の進行のもと、オンラインイベントの新しい可能性についてのトークを展開しました。ライブエンターテイメントの多くがバーチャル空間へ移行を続けるなか、XRがどんなかたちでその魅力を発揮しているのか、デジタルがアナログとどのように関わり合い、融合しているのかが語られました。
全4部構成、約4時間半に渡る番組を通して、共通して語られたのは、やはりデジタル空間でのエンターテインメントの可能性と、そのリアルな空間との併用・融合について。現実世界でのイベントが従来の通りには行えないことに悲観的になるばかりではなく、あらたな表現や体験の創出の可能性を模索する契機と捉える姿勢がやはり重要だと感じられます。
我々はこの混乱の時代を経てこれからどんなエンターテインメントに出会うことができるのか、多様に前衛的なプロジェクトを体験し楽しみながら、その発展の過程を見つめていける時代であるとも言えるのではないでしょうか。